道路は、通行荷重や地域性や気候等の影響を受け供用性能が低下していくと、安全・安心な交通に支障をきたしてしまいます。
そのため、舗装の破損具合を常に把握し、適宜適切な方法を考え補修しなければなりません。
補修は劣化の進行やさらなる破損拡大の防止を目的に行われ、その1つに既存の構造をさらに強化させ、供用性能の向上や回復に務め、修繕工法があります。
破損の形態によってさまざまな手法がありますが、本記事では切削工法とグルービング工法について解説します。
切削工法とはどんなもの
切削工法は、わだち掘れの盛り上がりなどの不陸・段差が生じるなど平たん性が極端に悪い場合、凸部を機械を用いて削り取ることで路面形状やすべり抵抗性の回復を図り、舗装の延命が期待できる工法です。
切削を行うと路面が粗面になるのですべり抵抗性が高まります。
また、表面処理や端部の処理、オーバーレイ工法の事前処理に使用されることも多いです。
路面切削のほかにも切削をした後に上からアスファルト舗装をする切削オーバーレイや路面切削機より切削幅が狭い場合に用いられる帯状切削もあり、切削を行った後は舗装をすることもよくあります。
ここでは予防的観点・応急措置観点からの紹介を目的として、路面切削を中心に解説します。
施工方法
準備工
切削によって発生材が生じますが、その影響で周辺の排水構造物に流れ込み溢水させてしまう恐れがあります。
そこで、詰まることのないよう集水桝等の排水構造物の保護をして、流入を防ぎます。
切削を行う
路面切削機を用いて、不陸の凸部に対して所要の厚さで切り取ります。
作業時は発生材や粉塵が飛散するので、散水して粉塵を抑える取り組みを行います。
切削延長上にマンホールや桝など構造物がある場合は、破損しないように一度切削機を持ち上げるなど注意して行います。
マンホール枠を中心にして回転する回転カッターを用いて舗装面とマンホール枠を撤去させる方法もあります。
発生材積込み
発生材を積み込む機械や装置を使い、舗装殻や粉塵などをダンプトラックに積み込み、所定の場所に搬出します。
官公庁の工事だと搬入箇所が特に定めてられいるので、注意する必要があります。
路面清掃車による清掃
粉塵発生を抑制するため、散水しながら路面清掃車で清掃を行います。
その際、切削溝の発生材の取り残しを確認し、交通安全や周辺環境を配慮しなければなりません。
怠ったまま交通開放をしてしまうと、事故につながったり、周辺住民の苦情につながる場合があります。
留意すべき事項
- 流動によるわだち掘れやコルゲーションなどでアスファルト混合物層が原因の場合は、切削を行ってもすぐに凹凸や平たん性が悪化など再発の恐れがあります。
(コルゲーションとは、車両の発進・停止が多い箇所で表面に凹凸が発生することです。) - あくまでも応急処置に過ぎないので、そのようなときは切削オーバーレイや打換えを検討し、路面表面だけではなく層ごと撤去しなければなりません。
- 切削路面は粗面であるため、車両走行時の騒音が目立ってしまいます。市街地や住宅地内の生活道路など住居環境がある場所では適用が困難です。
- 舗装が劣化している路面で施工を行うと、雨水が耐水して剥離破損が進行してしまったり、水たまりができてしまいます。
- 近年は、切削ドラムのビットのピッチを非常に狭くした切削機が開発され、路面の仕上がり具合の改善や車両走行の騒音低減が見込めるようになりました。TSファイン・ミリング工法と呼ばれ、コンクリート舗装の段差修正や機能回復などにも適用できます。